藁の上からの養子は相続人になりますか
藁の上からの養子とは、他人の子を実子として出生届をして育てることをいいます。
藁とは産褥に敷く藁のことで、出産直後の子を他人が貰い受けて自分たちの子として育てることをいいます。
日本では古くから行われていたと言われています。
この藁の上からの養子が相続人になるかどうかですが、
遺産分割協議や調停においてあ、相続人の範囲を確定する際、通常は戸籍の記載に沿って行いますので、仮に藁の上からの養子であっても、相続人間で実子と考えているのであれば、戸籍の記載を尊重して相続人として取り扱ってしまうことも多いように思われます。
それでは、相続人間でこの点が争いになった場合はどうでしょうか。
この場合、遺産分割調停では決着がつかず、親子関係不存在確認訴訟等によって決着をつけることになります。
そして、当該訴訟によって他人の子であると認められた場合には、親子関係はないものとなります。
また、過去の判例では、実子としての出生届の提出をもって、養子縁組の届出とみて、実親子関係はなくとも、養親子関係があるのではないかが争われたこともありますが、裁判所は、養親子関係も認めませんでした(最判昭和50年4月8日)。
しかし、近年の判例では、①育て親と子どもの間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ、②判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより子及びその関係者の被る精神的苦痛、経済的不利益、③改めて養子縁組の届出をすることにより子が育て親の嫡出子としての身分を取得する可能性の有無、④請求者が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的、⑤実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に請求者以外に著しい不利益を受ける者の有無等、の事情を考慮して、権利濫用として、親子関係の不存在を認めなかった判決も現れています(最判平成18年7月7日)。