相続財産に債務がある場合
(1) 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条本文)とされています。
(2) したがいまして、単純に相続人として相続してしまいますと、被相続人の有していた財産を承継するだけではなく、被相続人の負担していた債務も相続することになります。
(3) そうしますと、遺産に債務が多い場合には、相続人は多くの債務を背負いこむことになり、 不都合な事態が生じてしまいます。
(4) それを回避する方法としては、①相続放棄と②限定承認という二つの方法があります。
(5) ①相続放棄をする場合は、相続の放棄をしようとする者が家庭裁判所にその旨申述しなければなりません(民法938条)。そして、相続放棄がなされますと、その相続に関して、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法393条)。
(6) また、②限定承認というのは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認をするというものです(民法922条)。限定承認については、相続人が数人あるときは、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる(民法923条)とされており、また、限定承認者は、相続財産の管理を継続(民法926条)し、相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告をし(民法927条)、相続財産を換価したり(民法932条)、相続債権者等に対する弁済(民法929条)をしたりするという手続を行なうことになります。