遺産分割と預金
(1) 銀行預金は、ほとんどの方が持っているので、必ずと言っていいほど遺産に含まれる財産の種類です。銀行預金は、1円単位まで分けることができるので、遺産分割ではあまり問題にはならないように思いますが、そうでもありません。
(2) 被相続人が死亡したことを銀行に連絡しないで、相続人の一人がキャッシュカードなどで、被相続人名義の銀行預金をおろしてしまうことが時折あります。これは、後日遺産分割の際に問題となることが多いですし、厳密には、詐欺罪などの犯罪になることもありますから、やめるべきです。
(3) 銀行預金は、原則として相続人全員が同意しなければ、払い戻しや解約ができませんので、その際に、相続人間で話し合いをして、分け方を決めることが一般的です。
(4) しかし、相続人間の話し合いがつかず、遺産分割の調停や審判手続になった場合には、事情が異なってきます。相続人全員が銀行預金を遺産分割の対象とすることを合意した場合には、銀行預金も遺産分割の対象財産となります。しかし、相続人全員が合意しない場合には、銀行預金特に普通預金は、被相続人の死亡によって当然に分割され、各相続人が法定相続分に応じて銀行預金を取得することができるとされています。ですから、遺産分割協議ができなくても、各相続人が、銀行に対し、その相続分に応じた預金の支払いを請求する訴訟を提起して、判決に基づき預金を取得することができるのです。
(5) 銀行の定期預金については、普通預金と同様に考えるかについては、実務でも意見が分かれています。下級審判例に、普通預金と同様に可分債権として分割債権となることを認めたものがあります。ただし、郵便局の定額貯金については、最高裁判決(平成22年10月8日)において、一定の据置期間の定めがあること、分割払戻しを禁ずる約定がついていること等の事由があって、債権の性質上、不可分債権であって、当然に、単独分割債務とはならず、遺産分割によって決定されるとされています。
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