遺留分における財産評価時点

遺留分の算定にあたって、過去の贈与財産の評価は、相続開始時を基準として行います。

したがって、株式の評価も、倍以上の額となった相続人の死亡時点を基準として、遺留分の算定を行います。

たとえば、被相続人に子Ａ、子Ｂがいるケースにおいて、被相続人が生前に子Ａに当時の評価で２０００万円相当の株式を贈与し、死亡時に２０００万円の相続財産しかなかった場合を考えます（遺言はなかったものとします）。

仮にこのケースで、被相続人の死亡時にも株式の評価額が２０００万円であったとすれば、子Ｂの遺留分額は、（２０００万円＋２０００万円）✕１／２✕１／２＝１０００万円となる一方、子Bは、相続財産２０００万円の１／２である１０００万円を取得することができますので、子Bの遺留分侵害額は１０００万円－１０００万円＝０円で、遺留分侵害はないことになります。

一方、上記のケースで、株式の価値が死亡時に４０００万円であったとすれば、子Bの遺留分額は、（２０００万円＋４０００万円）✕１／２✕１／２＝１５００万円となり、子Ｂの遺留分侵害額は、１５００万円－１０００万円＝５００万円になります。

以上の例からも分かるように、株式等の価値が上下する可能性がある資産を贈与した場合、贈与時点では遺留分侵害が予定されていなくても、実際の死亡時には遺留分侵害が生じる可能性がある点には注意が必要です。

実際にも事業承継として、先代が相続人の一部である後継者に対し、自身が経営する会社の株式を生前贈与して事業譲渡することが考えられますが、贈与当時において遺留分侵害が生じないよう調整しても、その後の会社の業績によっては、他の相続人の遺留分を侵害する可能性も生じます（株式の生前贈与を受けた後継者としては、事業を譲り受けて経営努力し、会社（株式）の価値を高めた故に遺留分減殺請求を受けるという皮肉な結果となります。）。

このような事態を避けるため、中小企業経営承継円滑化法の定める手続きにより株式評価額の固定化をすることも考えられますが、相続人全員の同意が必要になります。

遺留分における財産評価時点

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