改正された相続税法がH27.1.1から実施されます
1.はじめに
平成25年度税制改正で相続税法の改正がなされました。その適用開始(施行)日は平成27年1月1日となっています。すなわち、平成27年1月1日以降に生じた相続については、改正法が適用されます。そこで、相続税法改正の要点をおさらいしてみます。
2.相続税の改正
①遺産に係る基礎控除(基礎控除額の引き下げ)
基礎控除額
H26.12.31まで |
H27.1.1以降 |
5000万円+1000万円 ×法定相続人の数 |
3000万円+600万円× 法定相続人の数 |
(※被相続人に養子がある場合、上記の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がある場合は1人、実子がいない場合は2人までとなります)
従前、法定相続人が配偶者と子2人の場合、遺産額が
5000万円+(1000万円×3)=8000万円
以内であれば、無税でしたが、今後は、
3000万円+(600万円×3)=4800万円
を超えると納税が必要となってきます(課税対象範囲が広がった=増税されたということになります)。
②相続税の税率構造(税率が上った部分がある)
○最高税率の引上げなど税率構造が変わります。
各法定相続人の取得金額 |
【H26.12.31まで】税率 |
【H27.1.1以降】税率 |
〜1000万円以下 |
10% |
10% |
1000万円超~3000万円以下 |
15% |
15% |
3000万円超~5000万円以下 |
20% |
20% |
5000万円超~1億円以下 |
30% |
30% |
1億円超~2億円以下 |
40% |
40% |
2億円超~3億円以下 |
45% |
|
3億円超~6億円以下 |
50% |
50% |
6億円超~ |
55% |
③税額控除(未成年者、障害者についての控除引き上げ)
・未成年者税額控除の控除額が、従前、20才までの1年につき6万円であったのが、20才までの1年につき10万円となりました。
・障害者税額控除の控除額が、85才までの1年につき6万円(特別障害者については12万円)であったのが、85才までの1年につき10万円(特別障害者20万円)となりました。
・税額控除額が引き上げられたということは、納税額が減ることになります(この改正部分は、減税といえます)。
④小規模宅地等の特例(限度面積の拡大等)
従前
限度面積 240㎡(減額割合80%) |
であったのが、改正後
限度面積 330㎡(減額割合80%) |
となります。
また、従前
特定居住用宅地等 240㎡ 合計400㎡ 特定事業用当宅地等 400㎡ まで適用可能 |
であったのが
特定居住用宅地等 330㎡ 合計730㎡ 特定事業用等宅地等 400㎡ まで適用可能 (貸付事業用宅地等について特例の適用を受けない場合に限ります) |
となります。
・なお、特例の適用となる宅地等の要件や特例の適用を選択する宅地等に基づく限度面積の判定のしかた等については、国税庁ホームページでご確認下さい。
・この改正部分は、課税対象者への優遇措置の拡充です(減税ということになります)。
3.贈与税の改正
①相続時精算課税(適用要件の緩和・拡大)
○適用対象者の範囲の緩和・拡大など相続時精算課税の適用要件が変わります。
贈与者 |
【改正前】 ・贈与をした年の1月1日において65歳以上の者 |
【改正後】 ・贈与をした年の1月1日において60歳以上の者 |
受贈者 |
【改正前】 ・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者 ・贈与を受けた時において贈与者の推定相続人 |
【改正後】 ・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者 ・贈与を受けた時において贈与者の推定相続人及び孫 |
②贈与税(暦年課税の場合)の税率変更(税率が上がる部分がある)
一般贈与財産と特例贈与財産とに分類して税率につき改正がなされました。3000万円超の部分につき最高税率が従前50%であったところ、一般贈与財産については55%。特例贈与財産については、4500万円超の場合55%と改正されました。その他の金額部分についても従前と変わったところがあります(一部は減額された部分もあるが、高額の部分では、増額となっています)。詳細は、国税庁ホームページを参照してください。
4.事業承継税制に関する相続税、贈与税の改正
適用要件、納税猶予期限の確定事由、納税猶予税額の計算、延納・物納、利子税等につき改正がなされました。全体としては、適用要件の緩和、手続の簡素化であり、事業承継税制をさらに利用しやすい制度とすることが改正の眼目です。詳しくは国税庁ホームページを参照してください。
5.まとめ
平成25年税制改正による相続税、贈与税等の改正が平成27年1月1日から適用となります。平成27年1月1日以降に亡くなられたときは、改正相続税法に基づく相続税申告となります。
(弁護士 本橋光一郎)